オレはさんが好きだ。初めて会ったときに一目惚れしたんだ。オレはさんよりみっつも年下だけど、それでもさんを好きなこの気持ちは負けないと思う。…誰にも、なんて言えない。だってオレの尊敬する太一さんも、さんのことが好きだからだ。太一さんがいる限り、オレが一番、誰よりもさんが好きだなんて、言っちゃいけない。
俺はが好きだ。大切な幼なじみ。昔からのことが好きだった。本当に、心から、好きだった。小さなころは幼いながらの気持ちだったと思うけど、今はハッキリとわかる。俺は、が好きだ。でも誰よりもが好きだなんて言えない。俺の大切な後輩の、大輔もが好きだからだ。大輔がいる限り、俺が一番が好きだなんて、言ってはいけない。



オレはまだ小学五年生で、しかもさんと初めて会ってからまだそんなに経ってなくて、さんのこともそんなに知らないし、さんもオレのことを知らないと思う。逆に太一さんは幼なじみで、昔から仲が良くて、オレの知らないさんをたくさん知ってて。きっとかなわない。でも諦めたくない。諦めたら試合はそこでおしまいなんだ。
俺は気が付いたころからと一緒にいた。ヒカリが生まれる前からいて、小さなヒカリがを実の姉と間違えるくらい仲が良かった。互いのことは良く知ってる。嫌いな食べ物とか、好きなバンドとか。多分今のままなら大輔に勝てる。でも油断しちゃいけない。油断をしていたら、試合の状況を逆転されてしまうんだ。


でも、ふと思うことがあって。あの人はおれなんかより、あっちの人の方が釣り合うんじゃないかって。ときどき、何かを思い返すようにその言葉がおれの頭の中をいっぱいにするんだ。確かにそんな気もする。…いや、きっとあっちの人の方があの人には釣り合う。あっちの人はおれの持っていないたくさんのものを持っている。おれじゃあ勝てないかもしれない。…負けは決まっているのかもしれない。

でも試合は、まだ終わっていないんだ。


確かに太一さんはすごいしかっこいいしオレだって太一さんみたくなりたいけど、それとこれは話が違う。オレは諦めたくない。諦めない。…でも勝てるとは限らないし勝ちたいというわけじゃないんだ。まだよくわからないけど、そんな感じ。
大輔はまだまだな奴だけど、これからすげえ奴になるかもしれない。サッカーだって俺なんかよりどんどんうまくなるかもしれない。でもそれとこれとは話が違う。俺は諦めない。…だけど勝てるとは限らないし、勝ちたいとも思ってない。あいつが幸せならそれでいいんだ、俺は。


うーん、でも、おれが隣にいたいなあ。



好きな人を想えるだけで

多分今は、幸せ。