「ごめんね」その声はひどく温かかった。長い間言えなくて困っていた言葉をようやく出せたのに、帰ってきた言葉はこれだった。その言葉には想いがぎっしりとつまっていた。あたしなんかじゃ言い表せないほどの大きな想いがそれにはあった。あたしはそんなものを持ったことがなかった。だって必死だったから。あなたに振り向いてもらうために頑張っていたから。それに気づけなかったあたしは大馬鹿者。馬鹿ものっていうかもう馬鹿。アホ。ドジ。全部全部全部全部当てはまるんだ。

「僕には、」いいの、わかっていますから。声にならなかった。出そうとしたのにそれは声にならなくて、空しく口が動いただけだった。続きの言葉が聞きたくなくてうつむいた。目に入るコンクリートが嫌に痛々しかった。まるであたしみたい。(ほんと、ばかだなあ)そのコンクリートは太陽を受け入れていた。きっといま触ると暑いと思う。本当にあたしはコンクリートに似ている。だってあたし、あなたという太陽、馬鹿みたいに受け入れてるんだもの。(なんてちょっとクサいかも)

「それじゃあ行くね」もう行ってしまうんですか。それも声にならなかった。『待って』なんて言えなくて、遠ざかっていくその背中をただ立って見ていた。手を伸ばしたら届いていたのかもしれない。待って、と言えていたら止まってくれたのかもしれない。でもあたしはなにもしなかった。怖かった。あの人に拒絶されることが。(なんて意気地なしなんだろう)あの人は最後までびしっとしていた。そんなあの人が見えなくなるまで、あたしはずっと見つめていた。

初めて人を好きになった。それがあの人だった。偶然出会って、ちょっと仲良くなって、優しくされて、少しずつ好きになった。好きになって、しまった。(こんなにも)あの人はあたしの中でとても大きな人だった。ねえダイゴさん、あなたの中であたしはどんな存在だったの?(やっぱあたし、ばかだ)どうか、あなたの大切な人と、お幸せに。
ああ、さよなら、あたしの、






























2007.07.15(すべて流れていつか笑い話になればいいのに)