(あなたがすきです。言葉にはできません。言葉にしてはいけません。でもあなたがすきです。)小さく心の中で繰り返して、繰り返して、そしてまた胸の中に閉まっておいた。開けちゃいけない。わたしが我慢してずっと言わないでおけばあの子が幸せになれるから。(あなたがすきです)想っちゃいけないのに心の底から悲鳴をあげるようにして想いはあふれてくる。止めることもできずに、今日もまたわたしは心を押さえる。

「あたしね、ダイゴのことすきなの!」

そう言ったのはわたしの大切な大切な親友。小さなころから一緒だった。それは喧嘩やら何やらだってしたけれど、わたしは彼女が大好きだ。(ほかの人から見た欠点だってわたしからすれば彼女らしい長所にも見える)頬を赤らめながら話を続ける彼女。話題の中心人物は、わたしの片思い相手。(言っちゃいけない、隠さなきゃ)ふーん、とか、へえ、とか、とりあえず当たり障りのない返答ばかり返していた。『わたしもすきなの』なんて言えるはずもなくて、にこにこしながら彼女の話を聞くことにした。

「だから、手伝って!」

衝撃的だった。いくら親友といえど、そんなことしたくなかった。ダイゴさんがこの子のものになるの?そんなの、いいの?(よく考えたらダイゴさんのこと呼び捨てしてるなあ)ドクドクと鼓動が高鳴るのがわかった。テーブルの下でそっと左手の脈を測ってみる。・・・早い。トクトクトクと、いつもより早いスピードで血が流れる。止まったら困るけど、ちょっと、ゆっくりにならないかな。

「え、っと」
「そう言えばすきな人いるって言ってたよね?!誰?教えてよ、あたしも手伝うからさ!」

そんなこと言えるわけないじゃないか。(ダイゴさんダイゴさんダイゴさんダイゴさん)心の中で名前を叫ぶ。それでも気付かれてはいけない。気付かせてはいけない。(仕方ないんだ)ダイゴさんだってこの子と一緒になれば幸せになれるかもしれない。わたしが告白しても良い返事が返ってくるとは思えないし。

「・・・いないよ」

意外とあっさりと出た言葉。いつもどおり素直で自然な言い方だったと思う。それを聞いた彼女はちょこっと残念そうな顔をしたあとに、また幸せそうに笑った。(羨ましすぎる)わたしはダイゴさんがすき。でも、それを言っちゃいけない。ダイゴさんはだいすきだけど、それぐらいにこの子もすきだから。どちらか選べ、なんて言われたって答えはない。しいて言うならば『二人とも』だ。(わたしが引けばきっと二人は幸せになれる)

「明日ね、ダイゴと出かける予定なの!なにかあったら報告するよ!」
「うん、頑張ってね」

(わたしの恋はここで終わりです。親友に幸せになってほしいのです。)それでも彼女が幸せそうに笑うたびに苛立ちを感じるしダイゴさんへの独占欲を止めることができない。たとえば彼女がダイゴさんと付き合うことになったとしよう。それでもわたしはダイゴさんのことを諦められないだろう。(なんて皮肉)ダイゴさん、あなたがすきです。でもそれぐらい彼女がすきです。二人とも大切なんです。他人から見ればこの気持ちが偽善だったとしてもわたしの『二人がだいすき』と言うことは変えられぬ真実である。

も好きな人出来るといいね!」










(幸せそうに笑う彼女の笑顔を壊してやりたいと思う自分もいるし彼女に幸せになってほしいと望む自分もいる。どちらかに絞ることはまだできない。わたしだって幸せになりたい。それでも彼女から笑顔を消したくはない。矛盾した気持ちにどうすれば終止符を打つことができるのだろうか。黙っていたのに疑問を感じたのか彼女がわたしの名前を呼んだ。「そうだね」どんなに心が悲鳴を上げていようとわたしは笑顔を作る他にないのだ。)






2007/08/17(殺せ、自分を)