(あ、笑った)



目線の先には、いつも君。撤回のできない嬉しいまでの真実。それほどまでに、僕の目線の先にはいつだって君がいた。彼女は当り前のように冒険中だったから、たまにしか会えなかった。会いたくて会いたくてどうしようもないときはときどき遠目から見たりもした。今になって考えてみれば、ストーカーみたいなことだったかもしれない。きっと君に話したら、ストーカー!と笑いながら怒られただろう。それから一度だけ背中をひっぱたかれるんだろう。まあ、それができたらの話でしかないんだけど。

君の笑顔は僕に向かっているものじゃない。君の笑顔は、彼のためのものでしかなかった。それでも僕は構わないんだよ。それほどまでに君が好きだから。こう言えば君はきょとんとした顔をするんだろう。なにかまったくわからないと言うような、かわいらしい表情をするんだと、僕にはなぜかわかっていた。根拠なんてどこにもなかったんだけど、今でも僕には断言できるよ。

今まではそっと思い続けるだけだった。時々アタックしてみようかな、なんて思うぐらいで。会話できるチャンスがあったらできるだけ会話して、一緒に買い物できたりするビッグチャンスを作ったり、僕なりに近付いたつもりだ。それでも君は僕を見なかった。きっと、あの日、君が僕に真実を教えてくれなかったら、僕は前と同じように地味に君を思い続けることになっていたんだろうと思う。

君が好きな人は僕にとってポケモントレーナーとしてのライバルだった。君はそれを知っていたからこそ、僕にいろんな質問をしてきた。君と話せるのはとても喜ばしいことだったけど、会話の内容は悲惨なものでしかなかった。いい歳こいてひどい嫉妬をしたものだ。君に彼のことをまったく教えなかった僕が、そこにはいたんだ。

君は言った。告白しました、と僕の大好きなその声で。もちろん結果は目に見えていた。今でも幸せそうな君の笑顔と薄紅色に染まった頬を忘れることができない。僕はただ良かったね、と言うことしかできなかった。今さら思いを告げる勇気なんて残念ながら僕にはない。小走りで彼のそばに近寄る君の小さな背中は、きっと一生僕の頭の中から消えることはない。



どうかの僕に
の笑顔を