運命とは皮肉なものだって誰かが言っていたような気がする。誰でも言っているような気もしないでもないけれど。わたしもそう思う。運命って言うのは、ひどく皮肉で、冷たくて、選ばれた人だけを幸せにするような、そんなものだと思う。選ばれた人だけが幸福になれる、本当に冷たい、道。それが運命だとわたしは思い込んでいる。そう思わないと、この運命を、嫌いになれないから。
きっとわたしがダイゴさんを好きになったのは運命なんだと思う。遺跡で怪我をしたわたしを助けてくれたなんていう、とっても素敵で運命的な出会いをして、仲良くなって、よく会うようになって、冒険をしているわたしの手助けをしてくれたりもした。そんな優しいダイゴさんに恋をするなんて、当たり前だったんだと思う。


ちゃん、君はとっても素敵な人だ。でもね、」


ダイゴさんはわたしより、何歳も何歳も年上だ。わたしの知らないたくさんのことを知っているんだと思うし、たくさんのことをわたしに教えてくれた。『子供』じゃなくて、『人』としてみてくれた。優しくて素敵で、強くて。非の打ちどころなんてない!わたしはどこまでもダイゴさんに首ったけ、というやつなんだと思う。深い意味は知らない。
ある日わたしはダイゴさんに好きです、と勢いの余り言ってしまった。恥ずかしくて仕方がなくて、否定しようと思った。嘘をつこうと思った。でもダイゴさんは、そんなわたしをじっと、真剣なまなざしで見つめてから、ごめんね、と優しい、わたしの大好きな声で言ったんだ。


「僕はね、君より何年も何年も、長い間生きてるんだ。君の知らないことだってたくさん知ってる。君が行ったことのない場所にも行ったことがあるよ。人を好きになったこともあったし、反対に嫌いになることもあった。もう嫌だ、と思えることもあったし、嬉しくてたまらないこともあったんだ。たくさんの人との出会いもあったよ。それと同時に別れもあった。うん、そう。僕は君より長い長い間を生きてる。君の二倍、とまではいかないけれど。それくらい僕は生きてる。」


運命とは皮肉なもの。わたしはやっぱりそう感じてる。わたしがダイゴさんを好きなったのは運命だと思う。それからきっとダイゴさんにフラれることも運命なんだ。わたしは、運命を嫌いになりたい。・・・でも、それは無理だ。運命は、わたしとダイゴさんを出会わせてくれた。だから嫌いになれない。やっぱり、運命は皮肉なもの。わたし、あんまり皮肉っていう意味、わからないんだけどね。


「君にはこれからもっと素敵な出会いがあるよ。僕なんかよりもっともっと素敵な人と、出会えるんだ。それはきっと運命で、ちゃんと僕が出会えたこともまた運命でね、ええっと・・・なんだか、まとまらなくなっちゃったな。とにかく、君には、僕じゃない方がいいんだ。今ちゃん、君が僕に向けてる感情は決して恋なんかじゃないんだよ。憧れ、って言うんだ。恋と似てて、少し違う。わかるかい?」


ダイゴさん。わたしに運命を教えてくれた、ある意味運命の人。皮肉っていう言葉も教えてくれた。かっこよくて、やさしくて、非の打ちどころがない、完璧な人。それがダイゴさん。わたしが初めて好きに・・・いや、心から憧れた人。でもそれはもう、何年も昔の話。ダイゴさんとは何年も会っていない。いいや、今から会いに行く。わたしは今、ポケモンリーグに挑戦しようとしている。


a long time ago,there was one girl
その少女は、心から運命を愛しました