ちゃん」「あ、ダイゴさん!」
振り返ったと同時に見えたきらきらしたまばゆい笑顔が僕の視界を染める。その笑顔は太陽のように明るくて、まぶしくて、どんなに暗くなっている僕だって優しく照らしてくれる。誰かに彼女の笑顔はかわいい?って聞かれたら、胸を張って答えることができる僕だけの解答を僕は持ち合わせているんだ。僕は好きだよ、なんて軽く否定しているような言い方のものだけどね。それでもそれは本心だし、ちゃんの笑顔がかわいいかどうかなんて、僕だけが分かればいいことなんだから。…まあこの質問、誰にもされたこと、ないけどね。


「お買い物?」「あ、はい!ボールきらしちゃったんです」「…ボールのために、わざわざミナモまで?」「どうせなら珍しいのも買おうかなって思ってたんですよ」「…そっか。ねえ、良かったら僕も連れていってもらえないかな?荷物持ちぐらいするよ」「も、もちろん喜んで!」
ちゃんが照れたように笑う。なんで誰も彼女の魅力に気付かないんだろう。…まあ、気付かなくていいんだけど。早く早く、と急かすちゃんを追ってミナモデパートに入る。相変わらず、人が多い場所だ。自ら選んだとはいえ、人が多い日に一緒に行きたい、なんて言うもんじゃあないな。ちゃんと一緒じゃなきゃ、絶対に来なかっただろうな、今日。さりげなくちゃんの手を握って、エレベーターに乗り込む。おそらくちゃんはひどく驚いているだろう。口から洩れそうな笑いを抑え込んで、ちゃんの手を握る力を少し強めた。…君の手をこのまま握り潰したい、なんて言ったらどうする?ちゃん。


「ダイゴさん、こっちです!」
その笑顔を壊してやりたいと僕が考えているなんて君は分からないだろう。気付くことなんてないだろう。気付かれたらそれはそれで厄介だから別に気付かれなくていいんだけれど。楽しそうにボールを選ぶちゃんの視点に合わせて屈む。プレミアボール欲しいなぁ、と呟いた彼女は全く汚れの無い笑顔を浮かべながらモンスターボールを片手に唸った。汚れの無いちゃんと、歪んだ考えだらけの僕。釣り合わなくたっていいさ、表向きには何も問題はない。レジへと向かうちゃんに引っ張られながら、空いた片手で口を覆った。にやけた顔なんて、見せられない。


「えへへ、荷物持ちありがとうございます!」「気にしないで、僕がやりたかっただけだからね」
僕が笑えばちゃんも笑う。端から見れば、ちゃんから見れば、なんの汚れもないほのぼのとした空気だろう。だからこそ、君を閉じ込めて、何もかもぐちゃぐちゃにして、僕だけのものにしたいなんて、誰にも言えない。言う気はない。この気持ちは僕だけの秘密。僕だけの、甘美な想い。




美しき