「悪い子はいねがああああああ!!!」「それ違くない?!」あまりにも楽しそうに部屋に飛び込んできたちゃんが可愛くて。(でも意味分かんなかった)今日は2月14日。…そう、バレンタインだ!世の男たちは頑張ってチョコレートをもらおうとしているのかもしれない。ま、僕には関係ないことだ。別にもらえるもらえない、じゃない。ちょっとした理由があるのだ。(前から計画していたこと!)慌てて隠した花束。ミクリにも手伝ってもらってきれいにはしたつもりだ。
売ってくれた花屋さんも、『いいセンスですね』と言っていた。これなら大丈夫のはず!僕はちゃんを見た。よかった、花束は見られてない。ふと、あることに気がついた。ちゃんからチョコレートの匂いがする。

「今日はバレンタインですよね!」「…さっきと言ってること違うと思うよ」気のせいです、ちゃんは楽しそうに笑った。それが気のせいじゃないことぐらい僕だってわかるよ!怒ったように言えば、今度は声を大きく出して笑った。くそう、かわいいじゃないか。
「見てください、これ!友達にチョコもらったんです!」嬉しそうに紙袋からお菓子を出す。ブラウニー、ガトーショコラ、マフィン、トリュフチョコ、クッキー…そのほか沢山。普通の男の子よりいいのもらってるよね、明らかに。ちょっと羨ましいよ!(ちょっとね!)僕は大体チョコレート専門店とかその辺で買ってきたようなやつをいつももらう。それで僕の心が動くことはない。(だって本命いるしね!)

「おいしそうでしょ!」「…そうだね、羨ましいよ」これじゃあ、朝僕の家の前に大量のチョコレートが置いてあったことなんて言えないなあ。僕は軽く笑った。
「それでですね、もちろんダイゴさんのために持ってきました!」「…本当かい?」少なからずともお僕の心臓はドクドクと鼓動の音を速めている。「じゃーん!」楽しそうに言って出したものは、きれいにラッピングされたお菓子だった。「…もしかして、手作り?」「イエス!」恐る恐る受け取って袋を開けると、ふわりとチョコレートの匂いが鼻にすうっと入っていった。ああ、なんて美味しそうなチョコケーキなんだ!「ひとりで作ったの?」「何度か失敗しました!」照れたようにごまかし笑いをしているちゃんはすっごく可愛かった!

それじゃあ僕も本番といきましょう。知ってるかい、ちゃん?バレンタインはね、本当は男性が女性にプレゼントを贈る日なんだよ。花束を背に隠して、ちゃんの前に立つ。ちゃんは不思議そうな顔をしていた。「ええと、あのね、」「ダイゴさんがどもるって…めずらしい」君があまりにも真剣な目をして言うから、思わず笑ってしまった。「それ失礼だよ」僕が作り上げた空気は全部かき消えた。「それで?」今度はふざけた顔をして話をもどすものだから、ペースが崩れたよ!「……」大きく息を吸って。「Happy Valentine。愛してるよ」ちゃんの前に花束を差し出した。片膝を床について、そっとちゃんの手を取り、手の甲に口付けた。色とりどりのきれいな花たちが、揺れた。

「〜〜〜〜っ不意打ちですか!」
花に負けないぐらいに、君の顔は真っ赤だった。



(美しくそれでいて大胆で)









2007.02.03