(ゲンさんがアーロンだったら)




「アーロン、」会いたいよ、あなたはどこにいるの?あまりに世界は広すぎて、あなたを見つけることでさえ困難。手掛かりなんてなにもない。どれだけの歳月が過ぎた?この世界に生まれおちてから、どれだけの人々に出会った?(でも彼はいない)広い世界で、わたしはひとり。心配するかのように、レントラーがすり寄ってきた。「ありがと、レントラー。わたし、ひとりじゃなかったね。」頭を撫でると、うれしそうに鳴いた。「今日はどこをさがそうか」レントラーに笑いかけると、レントラーはまた鳴いた。『今日は、いつもいかないところにしよう』声が、聞こえた気がした。

ふらりと立ち寄ったこうてつじまの洞窟。真っ暗だ。「レントラー、フラッシュ、おねがい」すぐ後に、ぴかりと光って、洞窟が明るくなった。(トレーナー、たくさんいそう・・・)面倒だと感じながらも、奥に進むことにした。
ざわざわと、ポケモンたちが騒いでいる。普通の人にはわからないだろうけど、わたしにはわかった。なにかが起きているのかもしれない。面倒事は苦手だけど、レントラーも気になってるようだし、探索してみよう。もしかしたら、なにか彼の手掛かりがあるかもしれない。見知らぬトレーナーが、話しかけてきた。

「あんた、強いんだね!」どうやらここで工事をしているらしいおじさん。わたしのレントラーで、すぐにバトルは終わった。「ありがとうございます。・・・あの、なんかこのしまで異変とか起きてたり、しませんか?」おじさんは、にやりと笑った。「・・・譲ちゃん、よく気づいたな。ギンガ団だかなんだか知らないが・・・そんなやつらがこのしまに来てるんだよ。おかげで俺たちも仕事ができないんだよな」まったく、面倒だ、そうおじさんは言ってから、この場から立ち去って行った。(なんかいい人だったなあ)相変わらず、彼の手掛かりはない。

「アーロン、やっぱりいないみたいだね」レントラーに話しかける。すると、彼は悲しそうに鳴いた。「ううん、レントラーのせいじゃないよ。また、べつのところでさがそう?」ここに、何か手掛かりがあるような気がしたのだけれど。ふうとため息をついて、出口へと歩き出す。隣には、青い体をしたレントラーがついていた。

出口が近付いてきた。階段を上がろうとすると、上から誰か降りてきた。日の光と重なって、顔が見えない。「・・・?」確かに、そう、確かにそう聞こえたのだ!聞き間違えることなどない、あの、彼の、アーロンの声が!わたしを呼ぶ、アーロンの声が!「アー、ロン?」まだ顔は見えなかったけど、腕を引っ張られて、そのまま外に連れ出された。
長時間浴びていなかった日の光は、ひどく眩しく、視界を歪ませた。「ねえ、まって、あなた、アーロン?」そう言うと、彼はぴたりととまった。彼を思わせる青い服、青い帽子。隣を歩く、ルカリオ。「私は・・・ゲンだ」やっとわたしの方を向いた。会いたかった、彼だった。「ゲン?あなたは、アーロンじゃないの?」レントラーはなにかに気づいている。「そうだな、私はゲン、嘘ではない、真実だ。だが・・・」ゲン、にまた腕をひかれ、今度は抱きしめられる。懐かしいぬくもり、懐かしいにおい。


「君を探していたのも、また真実だ」



夢のよう
(かれの腕の中はわたしのすべてだった)











2007.03.20