「まずい」
「え、何が?」
「むらむらす」
「ぎゃああああああ黙れ!!」





ばちん!





気持ちの良い音がわたしたちがいる付近に響いた。我ながらすごい音がしたと思う。叩かれた側だったら泣いてるかもしれない、この威力だったら。なんとも言えない沈黙が訪れる。い、今さらだけど、勢いだけでビンタしちゃった!!わたしのビンタで顔だけが右を向いたライの顔を、慌てて正面に戻す。ライの顔はまだ腫れてないけど、少し赤くなっている。



「ら、ライ!ごめんなさい、大丈夫!?」
「………」
「ライ!?」
「…お、おお、大丈夫だ!」



間があった気がするんだけど!いまいち状況を掴めていない様子のライ。頬っぺたがどんどん赤く染まっていく。わ、わたしのせいなんだけど、どうしようこれ!!ライはへらへらといつものように笑ってるけど、腫れ始めた頬っぺは痛々しくて見ていられない。



「ライ、わたし何か冷やすものもってくる!」
「…あ、いや、いいよ」
「だめだよ、腫れがひかない!」
「いいって」



ライが人のいい笑顔を見せた。どきん。胸が高鳴る。…じゃないじゃない!今はライの頬っぺたをどうにかしなきゃ!遠慮をし続けるライを振り切って冷やすものを取りに行こうと腰を上げた、ら。「だからいいって」と、ライに腕を掴まれた。



「え、ライ?」
「いいからさ、な?」
「ほんとに?ほんとに大丈夫?」
「ああ、大丈夫だからさ、俺の頼み聞いてくれないか?」
「頼み?いいよなんでも聞く!ビンタしちゃったし…なに?」



ライの頼みとやらを聞こうと、少しだけライに近付く。その瞬間、腕を強く引かれてバランスを崩した。どさっ。わたしとライしかいない、ライの天幕に今度は鈍い音が響いた。



「何でも聞いてくれんだよな?」
「う、うん?」



わたしの上に覆いかぶさるライ。心なしかにやにやしている気がする。え、なにこの状況?なんでわたしライに押し倒されてるの?
……ちょっと待て。わたし、なんでライにビンタしたんだっけ。思い出せ、思い出せ…!『むらむら』!!思い出した!ライがも、問題発言を…!



「俺、ずっとのこと好きだったんだ。だから相手、して?」
「ララララライさん、もしかして、」
「発情期ってやつだな」
「いやああああああ!!!」



わたし、ライのこと好きだけど、これは!!










発情期があるなら先に言ってください//2010.03.30)