「ハヤトさん、朝ですよ、起きて下さい」
聞き慣れた声が聞こえる。優しくて暖かい、オレが大好きな声だ。声の持ち主が、オレの布団を揺さぶっている気がする。そうか、もう朝か。まだ眠い頭を活動させて、重たい体を起き上がらせる。「おはようございます、ハヤトさん」目覚めてすぐ目に入ったのは、目覚まし係のポッポではなく、だった。―――え、?!予想外の光景に眠気は鮮やかに吹き飛んだ。え、なんで、なんでがオレの家にいるんだ!?しかもエプロン着てるし!?



、どうして、」
「やだな、ハヤトさん、寝ぼけてるんですか?…わたしたち、こないだ結婚したじゃないですか」


恥ずかしそうにうつむいた。…そうか、そうだった。オレとは結婚したんだった。それも、ついこの間の話だ。オレの想いがに通じて付き合うことになって、そして長い交際期間を経て、結婚に至った。オレもも、初めて会ったころより少し老けた。更に大人になった、と言った方がいいのかもしれないな。
幸せすぎて結婚したことを度忘れしたなんて…アホか、オレ。自分のアホさが悲しくてため息が出た。



「朝ごはんできてますから、冷めないうちに食べて下さいね」
「ああ、わかった」
結婚しても敬語の抜けないに、奥ゆかしさを感じる。寝室からが出ていくのを見届けてから、着替え始める。ちらりとベッドを見たら、二つ並べられているうちの片方の枕に、オレよりも長い髪の毛が落ちていて、なんだか恥ずかしい気持ちになった。あーもうオレヘタレすぎる。



の作った朝ごはんはとても美味しかった。朝から和食、オレの好みをわかってるな、!台所で洗い物をする後ろ姿がなんだか可愛らしくて、口元が緩む。にやけてるんだろとか言うな!力が抜けただけだからな!
しかし、今更ながら、オレはよく結婚に踏み切ったと思う。付き合う前だって会話するだけで死ぬかと思ってたのに…結婚って、オレ1日に何回死ぬんだ?



「それじゃ、行ってくる」
「あ、はい!」
玄関に向かうオレの後ろを、がパタパタとスリッパの音をたてながら着いてくる。ああ、朝から幸せだ。玄関で靴を履いてから、くるりとの方に向き直る。は、目を閉じていた。あーもうこれキスするしかないよな。行ってきますのキスだよなこれは!心臓爆発して新しいタイプの爆死しそうだけどオレ頑張る!


顔を近付けて、よし、するぞ、というところで、服の裾を何かに引っ張られたことに気付く。なんだよ、空気読めよ!と引っ張られた方を見たら、そこにはあの忌々しいエアームドがいた。てめっ結婚しても邪魔すんのか!!
エアームドと目があったと思ったら、奴は勢いよくオレを嘴でつつき始めた。お前自分の嘴の鋭さ知ってんのか!鋼タイプだろお前!!痛いだ………あれ、痛く、ない?




え?













「夢かちくしょー!!!!」









(仕組まずとも輝かしき日々//2010.03.30)