「うーん」
「どうしたんだ?」
「あ、すみません。ちょっと考え事してただけなんです」
「なんなら聞くぞ。話してみたら何か分かるかもしれないしな」
「そうですね、じゃあお願いします、アイクさん」



 ベグニオンとの戦いは終わった。これからは世界を立て直す時期に入る。共に戦ってきた仲間は散り散りになり、それぞれの場所でそれぞれの役割を果たすのだろう。国を立て直す者や、元の生活に戻る者。多くの者は自らの存在意義を確立しているというのに、わたしは。これから先の未来など一歩先も見えず、ただふわふわと1日1日を過ごしているだけだ。なんて情けない。 戦の間は、自惚れではあるが、役に立っていられたと思う。この地に闇魔法を扱える人は少ないから、なんていう適当な理由だけど。今までは気ままに旅をしていたけど、もう行きたいと思える場所もない。ああこれ、廃人にでもなればいいのかな。


「なんというか、やりたいことが見つからないんです。わたしの取り柄って闇魔法使えることだけですし。誰かに教えるにも、闇魔法は簡単には習得できないですし。言うほど頭は良くないですし、旅はもう飽きましたし、」
「ですしですし煩いぞ」
「アイクさんはひどいですし」
「要するにこれからの身の振り方を悩んでいるのか」
「そういうことですね」



 青い瞳をぱちぱちと瞬きさせなが、じろりとアイクさんはわたしを見た。人の目を見て話せる人なんだな、と何故か唐突に思った。誰もが憧れる澄みきった青色の瞳がわたしを見透かそうとしている気がして、いや見透かされたような気がして、思わず目を逸らした。わたしは薄っぺらい人間だが、隠しておきたいことは人並み以上にある。


「今更ですけどわたし、上司に馴れ馴れしく相談してますね。アイクさん、将軍の地位ですけどわたし一般兵ですよ。どうしよう」
「馬鹿か。俺たちは仲間だろ。それに将軍という地位は気に食わんし俺に向いてない、二度と口にするな」
「男前だと思ったら突然の俺様発揮ですか………。まあ、それはいいんですよ。アイクさんがわたしに対してだけ横暴なのは前からですし慣れてます!問題はこれからの話ですよ。あーもう隠者でもやろうかな」
「砂漠にでも行くつもりか」
「なるほど!ソーンバルケさんか!」



 ソーンバルケさんまだ砂漠に出発してなかったよね。そう呟いたら何故かアイクさんから強く射抜く用に視線を感じたので、えもいわれぬ恐怖を抱きつつアイクさんと目を合わせた。英雄殿はご立腹らしい。


「隠者になるとでもほざいたら叩き斬る。天空で」
「やめて下さいよ……リザイア間に合うかもわからないんですから」
「どうせお前のリザイアなんて大して効かないからな。叩き斬られたくなかったら大人しくここに残っておけ」
「残ってもやることないですってば」
「………お前の鈍感さにはほとほと呆れるな」



 苦悩するように左手で頭を抱えたアイクさんは、視線だけでわたしをじろりと見て、そして大きな溜め息を吐いた。なんだってんですか。わたし何もしてないじゃないですか。



「いいか」
「はい」
「お前はここにいろ」
「はあ」
「もっと言うなら、お前は俺の傍にいろ」


「………………へ?」
「分かったらはいだ、拒否権はないけどな、。つべこべ言わずに頷いとけこの馬鹿」
「え、は、え、ええ?いやちょっとよく分からないんですが」


「お前みたいな馬鹿にも分かるように説明してやる。俺が養ってやるからお前は俺の隣でへらへら笑ってろ」










(わかったかこの馬鹿//2012.06.26)