例えば僕が、君のことを好きだとして。









もしそんなことがあったとしたら今頃大変なことになっていただろう。何故なら君は太一の彼女だからだ。僕よりひとつ年下の、大切な仲間の、大切な人。だからもし僕が彼女を好きだとしたら僕と太一の仲が険悪になってしまう。だから僕が君を好きなんてこと、あり得ないんだ。僕は太一という仲間が心から大事だから。


「丈、今度皆で集まろうと思ってるんだけど、丈来れるか?」
「日にちもよるけど…今月は多分大丈夫かな」


例えば今僕としゃべっている太一が、彼女のことを嫌いだとして。もしそんなことあったら僕が太一を殴ってやる。殴って、謝らせてやる。非力な僕じゃあ太一にはあんまりきかないだろうけど、僕は持てる力の限り太一を殴る。君を泣かせるやつなんて誰でも許せないから。


「丈!、なにあげたら喜ぶかわかるか?!」
「太一があげたらなんだって喜ぶよ。教科書とかは嫌がるだろうけど」


例えば僕と太一が喧嘩をしたとして。なによりも悲しむのは彼女だ。彼女はとても優しいいい子だから。僕は太一と喧嘩なんてできない。君を泣かせる行為なんてなにひとつとしてやりたくないんだ。僕は君の笑う顔さえ見ることができたらそれで構わないから。


「丈、お前のアドバイスのおかげで喜んでくれた!サンキュな!」
「はは、気にしなくていいよ」


例えば君が、太一のことを嫌いだとして。そんなの許さない。太一は僕の大事な仲間だから。彼女に暴力なんてふりたくないしふらないけど、きっと僕は君を嫌いになる。僕にとって太一はとても大切な仲間だから。だから彼女が太一にとって大切な人でも、僕は彼女を許さない。




例えば君が、僕のことを好きだとして。僕が彼女を好きでも、そんなこと、夢でだってあり得ないんだ。