」「こんにちはランス様、お元気ですか」「ああ元気だ。はどうだ」「ええ元気です、アレン様と張り合えるくらいに」「それは結構」

彼女が楽しそうに笑う。笑顔も麗しい君は、私の目の前で花を散らす。この笑顔を、私はいつまでも見ていたいと、守っていきたいと思っている。使える主はフェレ家だが…できる限り、私は彼女を守っていくつもりだ。…なんて、言えたらどんなに良いことか。いつ死ぬかわからない騎士の私がいつまでも彼女を守れるかと聞かれれば、否定しか出来ないのに。

「ランス様、これから戦ですか」「ああ、そうだ」「またしばらく会えなくなりますね」「必ず帰ってくるさ」「…そう願っております」

切なげに彼女が私を見つめる。揺れるその瞳が愛おしくて、気が付かない内に彼女の手を握っていた。驚いたのは彼女だけでなく私自身もである。自分から握っておいて照れる私を、はいつもの笑顔で笑った。きっと馬鹿にしているつもりはないんだろう。まさに屈託の無い純粋な笑顔だった。

「…この戦が終わったら」「え?」「この戦が終わったら、必ず迎えに来る。」「ランス、様?」「そうしたら一緒に暮らそう。…結婚、しよう」「ランス…様……はい、喜んで」

もう一度花を散らす彼女。幸せ過ぎる空間だった。だがそれも脆くすぐ壊れてしまうもの。親友のアレンが呼びに来なければ、私は戦に参加せずずっと彼女の手を握っていただろう。一緒にいたところを見られたのは恥ずかしかったが、彼女は幸せそうだった。…それだけで、私も幸せである。

「ランス様」「…どうかしたか?」「ご無事を、願っております」

ちゅ、とかわいらしい音をたてて頬に触れた小さな温もり。顔を真っ赤にして走り去る彼女を見届けた後、私はただ立ち尽くすことしかしていなかった。いや、それしか出来なかった。珍しく、アレンに怒られるという失態まで起こしてしまうほどに、私はとにかく驚いていた。





広がる死体、血生臭い死臭が辺り一面を漂っている。相変わらず戦場は目を背けたくなるような光景でしかない。この戦では、現在、我々リキア同盟軍が優勢ではある。ただ兵士が全員無事かと聞かれればうなずくことは出来ない。…私もその内の一人だ。アーチャーに食らった弓矢が大分大きなダメージだったらしい。ライブで回復はしてもらったものの、回復仕切れなかったようだ。…どうしたものか。このまま何事もなく戦が終われば良いのに、と甘いことを考えた。

「ランス!」「…アレン?」「ランス、危ない!!」

アレンの声にハッとなり背後を振り向く。ニヤリと笑う赤の甲冑をまとうベルン軍の兵士と目があう。しまった、油断していた。剣を構えようと剣に手をかける。アレンの馬の走る音が聞こえる。スローモーションで流れる世界で、何か固くて鋭いものが私の中を貫いた。それから世界は、






(意識が完璧になくなる前、彼女が私の名前を呼んだ気がした)