まだ冷たい風の吹く季節。それでももうすぐ桜が咲くのだけど。「いってえ…」彼は言いました。そんなに痛むのなら喧嘩なんてやめればいいのにと、私は思います。それでもやめられない、それが普通なのかもしれない。なんにせよ彼に喧嘩は似合うから、あえて咎めないでおいています。「だーいじょーぶ?」「そんなやる気のない声で言われたってうれしくねえよ」ふいと顔をそらして、大門は空を見ました。凍てつくほど冷たい風が吹く公園。そこに彼と私はいます。暇だったから立ち寄っただけなんだけど、来てみたら大門が喧嘩してたので観戦してました。(もちろん応援もしてました)大門にボコボコにされた年上と思われる不良は体を引きずりながら消えていきました。ハン、雑魚が!…と言ったら今度は私が大門に叩かれました。このやろーおぼえとけ。大門は怪我をしてました。あいにく絆創膏をいつも持ち歩いているわけじゃないので、偶然ポケットに入っていたハンカチで止血してあげました。どうすればそんな怪我をするんだろう。「…なあ、」「なに?」彼は照れたようにうつむきました。「ああ、その、…ありがとな」照れたように笑った大門はかわいいです。思わず私も笑っちゃって、また大門に頭を叩かれました。女の子の頭をボコボコ叩くもんじゃないぞ!(女の子は怖いんだぞ!)「大門ってさあ、好きな人いるの?」「(ブハッ)…なんだよ、いきなり」面白いぐらいに慌てている大門。こいつ意外ともてるのになー…もったいないよ。「だってさあ、大門もてるのになーって」「べ、べつにお前が知ることじゃないだろ!」「いいじゃん、別に」好きな人のことは殴らないだろうし、大門は。つまり私じゃないってこと。(うんまあそりゃあ当り前だろうけど)「好きな人のことも殴るの?大門は」「な、殴んねえよ!」なんだか今までやってきたこと全部撤回するように必死な形相で私に言う。そんな大門もかわいらしかった。言ったら絶対怒られるけど。「ねね、私の顔殴ってみて?」(大門の好きな人、だれなんだろう)「…はあ?!」

「だって好きな人のことは殴らないんでしょ?」






(それはとても簡単なことだ)











2007.03.05