涙を必死に堪える彼女を、ぼくは好きになった。普通の女の子とは違って、声をあげず、歯を食いしばって涙だけを流す。そんな泣き方をするのが彼女だった。まず人前で彼女は泣くことすらしない。だからぼくが彼女が泣いているシーンを見れたのは偶然としか言いようがない。でもそんな彼女を見て、ぼくは彼女をどうにかして守ってあげたいと思った。だからぼくは今、彼女の隣にいる。(泣かないでほしいと思ってるのは確かだけど、彼女が泣いているところが見たいと思っている自分がどこがにいるような気がしてならない。ぼくは彼女が好きだ。ずっと、守っていきたい。)


「ネジキ、ネジキネジキネジキ。どうしたらいいのネジキ。わからないよ。ポケモンたちの気持ちがわからないの。わたしきっと彼らを傷つけてるよ。わたし、命令を押し付けてるだけで理解しようとしてない。どうしたらみんなの気持ちがわかるようになるのかな。もしかしたらわたし、トレーナー向いてないのかな」


目からたくさんの雫がこぼれそうだけど、彼女はそれを一滴も落とそうとしない。目に一杯溜めて溜めて、それでもこぼさない。歯を力の限り食いしばって、そして涙を引っ込める。時折喘ぎは聞こえるけど、それも小さなもので耳を澄まさなければぼくだって気が付けなかっただろう。彼女はぼくの前でも全く泣かない。瞳を潤ませながらぼくに思いを訴える、彼女はただそれだけしかしない。(目に溜まった涙はぼくの前でこぼれたことがない。誰の前でこぼれるんだろう。ぼくじゃだめなのかな。きみの涙がみたいわけじゃない。きみの涙を、すくいとってあげたいんだ)


「ネジキ、ネジキネジキネジキ。わたしトレーナーに向いてないよね、どうしたらいいんだろう。ねえネジキ、ポケモンたちに嫌われている気がしてならないの。わたしじゃあやっぱりだめだったのかな。あの子たちの気持ち、きっとわたし、全くわかってなかったんだよ」


彼女の瞳に溜まった涙はこぼれない。こぼさない。こぼさせない。その涙の量がぼくにはわかる。(ぼくがこぼさせないから、いや、こぼしてもいいよ、ぼくがすくいとってあげるから。もう歯を食いしばるなんてことはしなくていい。ぼくの前で声をあげて泣いてください。きみのポケモンたちだってきみを守りたいと思ってるんだ。あの敗北はきみのせいじゃないんです。ぼくの作った機械に聞かなくたってわかる。だってきみは、頑張ったじゃないか)



、」
「ネジ、キ?」
「泣きたいなら泣きなよ、ぼくが隠してあげますから。、歯を食いしばらないで。声をあげて。誰にも言わないよ、ぼくだけが知ってる、それだけ。だから押し殺さないでください。ぼくが全部、受け止めてあげる」


きみの涙を、ぼくがすくう