私の恋は、実らないの。 だってあの人にはすでに大切な人がいるから。心から大切にして、心から愛している人がいるから、私の恋は実らない。もしあの人が相手を思うことをやめれば、可能性は高くはないけれど、私の恋は実るかもしれない。もっとも、あの人たちの恋はきっと終わることを知らないんだろうけど。確かにあの人が幸せならそれでいい。でも私は諦められていないの。複雑な気持ちのせいで心の中はもうお祭り騒ぎ。…いい意味じゃないんだけれど。 「カトレアお嬢様」 「コクラン」 「何を見ていらっしゃるのですか?」 「…なにも、みてないわ」 フロンティアの中庭を仲良さそうに肩を並べて歩く二人を、わたしは上の階からじっと見ていた。かれこれ30分間ほど見ていたからか、コクランが私を心配してか声をかけてきたのだけど、私はコクランの方を見もせず、二人から目を離せないでいた。(楽しそう)笑顔を見せあう二人。見ているだけで胸の内がきゅ、と締め付けられる。二人を見ている間に、どうやらコクランはキャッスルに戻ったらしい。私の近くにいたはずのコクランはいつの間にか姿を消していた。 「」 「うん?どうしたの、ネジキ」 「が作ったお菓子、とてもおいしかった」 「あ、ありがとう!良かった、ちゃんと食べられるものになって」 突然、二人の声が近くに聞こえた。慌ててその方向を見る。どうやら私がコクランを探している間に上へ登ってきたらしい。あと少しでこの階に着く、というところまで来ていた。(た、大変!)近くにあったオブジェの影に急いで隠れる。楽しそうに会話している二人を、その影からこっそり見続けた。二人はベンチに座って、先ほどと変わらず、時々笑顔を見せながら会話をしている。今日の快晴も、この和やかな空気も、あの二人を祝福しているような気がしてならなかった。 「」 「なあに、ネジキ」 「もう少し、こっちに来て」 二人が、唇をあわせた。思わず目を背けたけど、二人がキスをしたその情景が脳裏に焼き付いてしまったようで、全く頭から離れない。自分の顔が暑くなるのを感じた。吸って、吐いて、吸って、吐いて。十分な深呼吸してから視線を二人に戻す。照れたように笑いあう二人が私の瞳に映り込む。その時、『やっぱり私の恋は実らない』と改めて感じた。二人が気付かない内に、その場から立ち去る。…逃げた、という表現の方が正しいかもしれない。 なんでそんなに幸せそうなのかしら。なんでそんなに、笑いあえるのかしら。私だって好きなの、あなたのこと。心から大切にしているつもりなの。(好きよ)それでもきっと、あの人の瞳に私は映らないでしょう。あの人にはとても大切な人が、愛している人がいるから。どうして私じゃだめなのかしら。答えの出てこない疑問がぐるぐる、ぐるぐる、頭の中を駆け巡る。私だって好きなのよ。誰よりもだいすきなの、。ネジキよりわたしの方があなたのこと好きなのにな。 |