雫ぽたり





ぽたり、

突然どうしようもないくらいの喪失感がわたしを襲った。(どうしよう、一人でいたくない。どうしたらいいの?怖いよ)もう寝ようと布団の中に入ったはいいものの、中々寝付けなくて、その寝れない間にいろいろなことをぐるぐる考えてしまって。布団の中でもやもやしている内に嫌なことばかりが頭の中を駆け巡っていて、いつの間にか憂鬱な気持ちになってしまった。最初から眠れなかったというのに、更に眠くなくなってしまった。近くに置いてある時計は布団に入ってから一時間の時間を示していた。…どうしよう、本当に眠れなくなった。このまま寝れずに朝になってしまったら最悪だ。肌の調子も悪くなるし目の下にくまだってできる。明日はリョウといわゆるデートなのにそんなことあってはいけない!寝なくちゃ、寝なくちゃ。そう思えば思うほど目はギンギンに冴える。まず最初に眠れなかった理由がリョウとのデートが楽しみだったから、なんて子供すぎる。今日全然寝れなかったなんて明日リョウに会っても絶対に言えない。恥ずかしいし、そんなこと言ったらきっとリョウはわたしを心配してしまう。そんなのだめだ、リョウに負担はかけたくない。なぜかはわからなかったけど、涙が出てきた。ぽたりぽたりと、ゆっくりと。



ぽたり、

リョウ。どうしたらいいの。眠れないよ不安だよ。始まった喪失感は止まることを知らなくて、わたしの中のいろんな場所に根っこを伸ばす。過去に起こった数えきれない小さかったり大きかったりする嫌なことが走馬灯のようにわたしの頭の中をぐるぐるぐるぐる。涙もついに速いスピードで頬を伝うようになった。久しぶりにこの感覚になったけど、ここまでひどかっただろうか。やめて、そんなの思い出したくない!言い聞かせてみたけどそれでもわたしの頭の中はたくさんの不安で一杯で。どうしよう、これ明日(といっても日付は一時間前に変わったけど)リョウに会えるまで続くの?そんなの耐えきれないよ。涙はぽろぽろ出てくるし、寝れないし、不安だし、もう最悪。心拍数も上がってる気がする。怖いよ。眠れないよ。リョウに、会いたい。




ぽたり、

布団から出て窓の前に立つ。外は真っ暗だけどあと少しすれば明るくなり始めるに違いない。結局こんな時間まで起きてしまった。お肌、ちょっと荒れてる。どうせなので部屋の電気をつけてみた。もういいや、憂鬱な気持ちになってるけどポジティブ思考にして起きてよう。…ポジティブ思考は無理かも。コツン、窓から音がした。ん?何の音?窓の向こうは暗くてよく見えない。コツン、コツン。でも確かに音がする。小石か何かを窓にぶつけたような、そんな音が確かにした。(ゴーストタイプのポケモンじゃないよ、ね)わたしの家は五階立てのマンションの三階にある。はね上がりそうな心臓を押さえ付けて、なるべく音をたてないように窓を開ける。窓の向こうにいたのは、ビークインに捕まったリョウだった。え、うそ、リョウ?


!」「え、なんでリョウがいるの?」「明日…まぁ今日だけど、君に会いたいっていう気持ちが止まらなくて、仕方ないから来ちゃいました。…寝てたよね?やっぱり迷惑だったかな」「そんなことない!」「本当に?良かった、ボク間違ってなかったんだね。なんとなく君になにかあったんじゃないかな、とか思って」




窓からの訪問者を部屋の中に招き入れる。お疲れ様ビークイン、戻って。リョウはビークインをモンスターボールに戻す。リョウに座るよう促すけど、なぜかリョウは首を横に振った。「なにかあったの、?」リョウはなんでわかるんだろう。なんでわたしの心を見透かすことができるんだろう。「もしかしてわたしって虫ポケモン?」「なに言ってるの、そんなわけないでしょう」リョウの声も仕草も姿も表情もわたしの中にぽっかり空いていた穴を何事もなかったかのように埋めた。「リョウ、わたしね」「うん?」「…すごくリョウに会いたかったみたい」わたしの心の中の穴を埋めることができるのはきっとリョウだけなんだろう。涙はいつの間にか止まっていた。


「ほら、こっちにおいで!」そしてわたしはリョウの腕の中に飛び込んだ。


ぽたり
























からっから