「I'm proud of you!」


「俺、負けたんだ。」マジ駄目な奴だよな、俺って。大輔たちにあっけなく抜かされた。また俺たちの出番が来たのだとすごくよろこんだのに。それでもあっけなく負けたんだ。オメガモンは頑張ってくれたのに、俺たちが諦めたから負けたんだ。俺たちがもし、あそこで諦めなかったら。それこそ勝敗はどうなっていたかわからないだろうに。

「八神は負けてなんかないよ」彼女のその言葉が痛かった。彼女は別に選ばれし子供たちなんかじゃない。ただ面白そうに俺たちの戦いを眺めていただけ。「すげー!」とか「かっけー!」とか一言も漏らさずに、ただ口元をすこしだけ釣り上げてその光景を眺めていたのだ。・・・なんとも不思議な人なんだろう。ちなみに、俺と彼女はクラスメイトという関係にあたる。彼女とはクラスではあまり話さない。別の機会でも話さない。ただ俺が茫然としていたら笑いながら話しかけてきたのだ。慰めに来たのか、笑いに来たのか。そんな相手に俺も心を開いている。・・・謎だ。

「同情ならいらねーから」皮肉めいてそう言ったのに彼女は笑うだけだった。白い前歯が見える。なあ、お前はなんでそんなに楽しそうに笑う?俺のなにがおかしいんだ?そう聞いてみても、彼女は適当にはぐらかすだけだった。いい加減立ち直ればいいんだと思う。空にも、ヤマトにも、みんなに言われた。俺だけが背負うことじゃないって。そう、言ってくれた。でもどうしても立ち直れなかった。昔デジタルワールドに行った時のあの後悔のような、そんなものが心に渦巻いていた。(どす黒いそれが、)

「同情じゃないよ。お前ばか?あたし八神なんてどうでもいいし」それはそれは、本当にどうでもよさそうな言い方だった。んだよ、と呟いてみたがそれにも彼女は反応しなかった。本当になんなんだろう、こいつは。そんな間にも俺は後悔に襲われていた。一時期友達にはなったもののもう縁を切ったのに。まだ後悔というものは俺のことが好きらしい。

「じゃあなんなんだよ。笑いに来たのかよ!」
ついに堪忍袋の緒が切れて怒鳴ってしまった。でも彼女の顔は笑ったままだ。(まじでなんだよこいつ)
「あんたマジばかだよね。あたしは八神を笑いに来たわけじゃないし、つかさ、」

「八神ってかっこいいと思うよ」
I'm proud of you!そう続けて言ってから彼女は笑いながら走り去って行った。まじでなんなんだ、あいつ。名前は。性格はよくわかんねえ。だってあんまり喋ったことないから。ただ一つ、俺にわかることは。
俺があいつに惹かれてる、ってこと。(くそ、なんなんだよマジ!)


and I love you!
(私はあなたを誇りに思っています。そしてあなたが好きです)







2007.05.25