7月15日。今日は、俺の誕生日である。





レディ・ファイト!




…はず、なのに!まだ祝ってもらっていない!いや、友達とか家族には祝ってもらったけど…。なんというか、はっきり言いたくもないんだけど…あいつに、祝ってもらっていないのだ。俺にとって最愛のあいつ、に!すきな奴に祝ってもらえないとか・・・俺、死んだほうがマシ。ていうかさ、俺とって付き合ってるんだよね?なんなんですかこれ?あいつ本当は俺のこときらいなんですかね?小さく、溜息をついた。朝起きてすぐ、携帯のメールチェックしたのに、フォルダにあいつの名前はなくて、かわりに友達からの沢山のお誘いがびっしりと埋め尽くされていた。(全部行ってきた俺はすげえ)午後2時、お昼の時間はとっくに終わったこの時間に俺は旅にでます!なんの?…てそりゃアンタ、探しのだよ!


ラウンドワン!



とりあえず、本人探すか!・・・といっても手掛かりは何もなし。あるはずもないんだけど。携帯、電話は通じないしメールは返ってこないし。唯一の手段だったのにと小さくうなだれる。まあとにかく、居そうなところを探してみよう。ピンポーン。の家のインターホンが鳴る。「あら、太一くん!」出てきたのはのお母さんだった。話が長くなりそうだったので、「ちゃんいますか、」と言った。緊張していたからかもしれない、声が変に上ずった。「?ああ、あの子ならさっき出かけて行ったわ。そうそう、これ、太一くんがきたら渡してって」のお母さんから渡されたのは一通の手紙だった。中学生らしくメモをきれいに折りたたんだものだったけど。「ありがとうございました」すっげえ恥ずかしくなって走り出す。あいつ、俺が来ることわかってたのかよ!の家が見えなくなったぐらいの場所で、ペラリ、メモを開く。『私は某バンドの金髪ボーカルの家だ!』・・・なにこれ、なんのゲームですか。重い足を動かして、俺はヤマトの家に向かった。


ラウンドツー!



「ああ、浅羽?さっき来たけど帰ったぜ?」またか・・・。がくり、今度は大きくうなだれる。ヤマトの笑い声が聞こえた。「そうそう、それでよ、これ浅羽がお前に渡せって」そう言ってヤマトから渡されたものはさっきとおなじ、手紙。今度はさっきとは違う織り方だった。「がんばれよ、太一」ああヤマト、お前、すっげえ憎らしいんだけど。俺が言ったらヤマトはまた笑った。(ばかやろうめ!)「邪魔したよな、わりぃ」「気にしてねーよ、頑張ってこい」ヤマトに背中を押されて俺はまた旅立つ。携帯の時計は、午後2時50分と表示していた。(頑張れ俺)ヤマトの家から離れて、またメモを開く。いまさらながら言わせてもらおう。・・・暑い。汗がだらだらと体中を流れている。ぽたり、メモに汗が滲んだ。「私は某テニ 少女 家!」・・・あ、文字まで滲んでる。


ラウンドスリー!



なら・・・」ええいもう飽きたっつーの!いい加減にしろよ!俺が叫ぶと空は困ったように笑った。「でも太一、これの指示にしたがわないとには会えないわよ?」(そうだよ、な・・・)「ありがとな、空」俺はまた走り出す。もちろん、片手にメモを持って!それから、俺はいろんな人の家に行った。メモをもらって、それに書いてある場所に向かう。このエンドレスリピート。只今夜の8時。ちょ、俺どんだけ頑張ってんだよ!さっき貰ったメモをぐったりしながら開く。次はどこですか?もう地球の裏側とか言われても言ってやるよ!もうなんか言ってやるよバカヤロー!・・・『私は君の家にいる』。おい、こういうオチだっていうのは聞いてねーよ。


ファイナルラウンド!



息を切らしながら到着した俺の家。ただいまも言わずに扉を開けると、玄関に見慣れない靴が置いてあった。(だ!)「これ美味しいです!さすが太一のおかあさま!」「そんなに言われると照れるわあ〜」「あ、お兄ちゃんお帰り」「よ、太一!」あいつは・・・は、普通に俺の家で夕ごはんを食べていた。殴ってやろうか、こいつ。あんだけ頑張った俺はなんだったんだほんと。「・・・ちょーっとこい」腕を引っ掴んで椅子から立ち上がらせて引っ張る。「痛いんですけど太一くん!」あーもう、なんなんだよこいつは!ついた先はベランダ。ここなら大丈夫、家族に見られない。「お前、なにがしたかったんだよ」「え〜」「・・・ちゃんと答えろよ」めんどくさい、は小さく言った。「言・え・よ」「・・・はい」
「た、太一くんを独り占めしようかと思いまして」「・・・はあ?」「つまりですね、太一くんの頭のなかをあたしで一杯にしようかと思ったんですよ」しばらくの沈黙。(・・・ああ、なんだ)「おまえ、かわいい」むぎゅ、とを抱きしめる。「ちょ、あの、はなれましょうよ」「で、俺に言う言葉はないの」「へ?ないよ」「はあ?誕生日おめでとう、は?」「え?」「何お前」「誕生日って明日じゃないの?」

こういうオチだっていうのも聞いてねえよ!


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2007.07.15(なにこれ、俺不戦敗?!)