「お前が好きなんだ」

(知ってたよ。知ってたんだよ。)それでも俺はあいつに好きだって告げた。それは俺がまだジムリーダーを制覇していなかったときの話だ。気がついたらあいつを好きになってて、目で追うようになって、忘れられなくなって。なにかあるごとにあいつのことを考えた。冒険中だったからなかなか会えなかったけど、会えた時は一緒に行動するようにしてた。少しでも長く隣にいたかったから。(なんていう純情な恋愛だ)

「ゆうき、」

俺の名前を呼ぶ君はいつも悲しそうだった。それを見る俺も悲しかった。あいつがそんな顔をしているときは大体あの人が絡んでいるからだ。(頼むよ、俺の前でそんな顔をしないでくれよ)あの人とは俺が尊敬している人、兼、俺の最大のライバルだ。ジムを制覇したら倒しに行く予定だった人である。あいつの頭にはあの人しかいなかった。俺と二人っきりのときも、あの人のことばかり考えていたのだろう。

「泣くなよ」

いつも泣かないあいつが泣いたとき、俺はどうしたらいいのかまったくわからなかった。今なにか言えば逆にあいつは泣いてしまいそうで。「ここで待ってて」俺はそうあいつに告げると、急いでリーグに向かった。勝てるかなんてわからない。ただ、俺はどうしても、あの人と闘いたかったのだ。の頭を占める、チャンピォンに。

「わるい、負けた」
「ユウキはなにも、わるく、ないの、に?」

あいつはダイゴさんが好きだった。本人曰く初恋だったらしい。でもダイゴさんには好きな人がいた。もちろんじゃあない、別の女の人だ。聞いた話によるとその人はダイゴさんと見事に釣り合っている美女らしい。実際に見たことがあるはそう俺に語ってくれた。もちろん涙と一緒に。(頼むよ、なあ、泣かないでよ)

「俺はお前が好きなんだよ」

(初恋は叶わない)確かにその通りだ。の例を見てわかるけど、実際、俺の初恋も淡く散ってしまったのだ。(なんでお前はあの人が好きなんだよ)なんて捻じれた恋愛模様。ダイゴさんはあの女の人が好きで、はダイゴさんが好きで俺はが好き。一方通行過ぎて戻ってこれない関係。捻じれはどうすれば戻せる?
































別の日に聞いた話だ。話に出ていたあの女の人は、俺が好きらしい。俺に負けたダイゴさんが口に出したのだ。



2007.09.30(出口なんてないんだ